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ILS(ILove静岡協議会)連携授業の成果報告会(2014年9月22日更新)

報告会の様子
報告会の様子

 8月21日にILS(ILove静岡協議会)連携授業の成果報告会がありました。
 I_Loveしずおか協議会とは静岡中心街の賑わいを目指す参加団体数362の企業組織団体です。

 連携目的は
1.静岡中心市街地でのまちづくりを通して、大学生(本学と静岡大学)が地域社会・社会人と協働し様々な能力・スキルを実践的に学べる場を構築する
2.静岡中心市街に対する学生の興味・関心を高め、将来的に静岡まちづくりに貢献できる人材を育成する
といったことです。
 具体的には、静岡市街地をフィールドとした研究を立案し、調査・実験を行い、その成果を静岡の企業の方々と他大学(静大)の学生の前で、報告・発表するという形式です。ここ数年文科省などからの要請が高まっている、問題解決型学習(PBL)の形式をとっています。

 今年度は静岡大学1チームと本学心理系の永山ゼミと観光系の野瀬ゼミの2チームが参加しました。

 今回は、この心理系の永山ゼミ(人間社会学科3年生:手塚・加藤・稲葉・荻)の発表内容について説明します。
 永山ゼミは赤ちゃんポスターによる違法駐輪の抑止効果について検証しました。静岡市内の中心地域(おまち)は、違法駐輪が多いため、多くの方に問題意識を持ってもらう事、迷惑になっていることを理解してもらう事、また近隣に駐輪場があることを知ってもらうことで違法駐輪の減少を測ることを目的とし、実験を実施しました。

 違法駐輪をあつかった事例の中でも、兵庫県神戸市は、顔を使ったコーンを、放置自転車の多い箇所に設置し,放置自転車が以前の約10%減少したことが報告されています。この事例がおもしろいのは、言葉を用いたものではなく、顔を扱った点にあります。他にも顔を使った事例に、交通事故を減らすために、ドイツ・ベルリン市は、子どもの写真入りの電光掲示板を通学路などに掲げ、効果を上げているという報告がありました。
 さらに、永山(2014)の実験結果によるとドライビングシュミレーションの実験の際、子どもの顔を提示すると、車の追突回数が減ったことがわかりました。そこで違法行動の抑制を身近な環境である静岡英和学院大学内で検討したところ、コンビニ前における飲食禁止場所での飲食行動が確認されました。その禁止行動を抑制することで違法駐輪の抑制にもつながるのではないかと期待し、顔写真を飲食禁止のテーブルに設置し飲食行動の抑制が見られるかどうかを検討しました。
 この実験の結果、写真がない場合の飲食率が44.4%に比べ子供の顔写真が35.7%、絵の写真が45.8%、人の顔写真が55.2%でした。この結果から、特に子供の写真が飲食行動の抑制につながりやすいという傾向が見られました。
 ちなみに、目の絵があると、公共場面での行動は抑制されやすいという研究結果が得られていますが(大原、2012)、これらの研究では、大人の顔や目だけのもの、のみ使われていたことから、気持ち悪いというクレームも挙がっていました。
 つまり、目のみではなく、顔、特に子供の顔の方が、行動の抑制に大きな影響を与えるのではないかと推測されました。

 そこで、実際に赤ちゃんポスターを公共の場に掲示してみて、赤ちゃんポスターの効果の検証を行うことにしました。今回は、静岡鉄道の日吉町駅前の違法駐輪を対象にポスター効果の検証を行いました。
 掲示するポスターのデザインに関しては、イラスト風のものを作成しました。理由は地域での溶け込みやすさという観点からです。以前神戸市が行った放置自転車対策では、リアルな写真が使われたのですが、にらみつけられているようで怖いという苦情があったと報告されています。そのため、今回は、デフォルメされた柔らかいイメージの赤ちゃんポスターを作成しました。
 具体的には全体的にイラスト風にし、文字のフォントは柔らかい印象にしました。また、今回は赤ちゃん目線で「ベビーカーが通れないよ!」と困っているのを伝えるメッセージを吹き出しでつけました。
 ポスターを掲示する前に1週間ほど事前調査を行い、違法駐輪台数を確認しました。次に、事前調査が終了した後に作成したポスターを駐輪禁止区域に等間隔で掲示しました。ポスターを掲示してから7日間の間、何台違法駐輪があるのか計測し、そしてポスターを貼ったことによる効果の検証を行いました。検証が終わったのち、使用したポスターは撤去しました。
 実際にポスターはこのような形で建物の壁や、コンクリートの壁に貼らせて頂きました。貼る位置は人間の目線の高さになるようにし、ポスターをできるだけ多くの人に見てもらえるように掲示しました。
 その結果、ポスター掲示から翌々日の木曜日に違法駐輪行動が10数台ほど減少したことがわかりました。しかし、その日以降また違法駐輪台数が元の台数に戻りました。理由としては、罰則規定もないため、ポスターだけでは長期的な抑制行動を生じさせなかった可能性があります。ポスターによる違法駐輪の減少には一時的な効果しか見られませんでした。
 今回の実験で用いたポスターの掲示だけでは、違法駐輪を長期的に減少させる有効な手段とは呼べないことが分かりましたが、設置した箇所の近隣住民から、ポスターに対して好印象を得ることができました。よって、町の雰囲気に合ったポスター作製としては、成功したのではないでしょうか。
 心理学というと閉じられた空間の中で研究されるイメージが大きいと思いますが、このように、町に出て実際のフィールドワークを通して研究する場面もあります。ぜひ、皆さんも体験してみてはいかがでしょうか。

<参考・引用文献>
・放置自転車が大幅減 静岡市で“駐輪場設置+歩行者天国”の社会実験(2012) http://cyclist.sanspo.com/31689

・効果抜群「目力看板」神戸で大論争…放置自転車“激減”だが苦情も 「子供が泣く」「神戸にふさわしくない」 http://cyclist.sanspo.com/112098

・永山ルツ子(2014) 子どもの顔は成人の衝動的行動を抑止するのか? 静岡英和学院大学紀要 印刷中

・大原貴弘(2012) 目があると、公共の場での行動基準はどう変動するのか。 日本心理学会第76回大会発表論文集,p698.

静岡英和学院大学 人間社会学科
永山ルツ子

 

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