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厚生労働省平成26年度児童福祉問題研究事業に携わって

 みなさんは、「社会的養護」という言葉をご存知でしょうか?
昨今、子ども虐待は社会問題の一つとしてマスコミなどで多く取り上げられています。ニュースで虐待事件の報道を耳にしたことはあるのではないでしょうか。虐待を受けた子どもたちは、場合によっては児童相談所によって保護され、その後、児童養護施設などで生活することになります。虐待だけでなく、親の病気や経済的事情で家庭での養育が難しいとき、社会が子どもを養育する仕組みを日本では「社会的養護」と呼んでいます。施設での生活でなく一般家庭で生活する里親制度もその一つです。
 現在、社会的養護の大部分を児童養護施設が担っています。概ね2歳~18歳までの子どもたちが集団生活をし、保育士資格や社会福祉士資格を持ったケアワーカーと呼ばれる職員が生活を共にし、ケアをしています。入所児童の約6割が虐待を理由に入所していると言われていますが、実際には8割近くの子どもが何らかの虐待を体験しているという報告もあります。朝昼晩とご飯を食べる、地域の学校に通う、友達と遊ぶ、お風呂に入る、大人が関わる、しっかり寝る、そういった日々の生活が子どもにとってのケアとなります。
私は、十数年、児童養護施設で心理職として働いていましたが、たくさんの様々な事情を抱えた子どもたちに出会い、心のケアって何だろう、子どもを育てることについて、18歳になったら施設を退所し、社会に出ていかなければならない子どもたちに対する支援とは何だろう、日々の生活が子どもたちに与える影響は?など多くのことを考えることになりました。
 社会的養護にはまだ、課題がたくさんあります。虐待を受けた子どもたちが集団生活をすることの是非、18歳で家族からの支援が乏しい状況で自立をすることの難しさなどなど・・・。日本では児童福祉に関するデータがまだまだ不足しており、課題改善のための施策を考えるには、多くの更なる研究によるデータが必要です。
昨年度、厚生労働省委託事業である平成26年度児童福祉問題研究事業に関わり、「社会的養護によるリービングケア・アフターケアに関する研究」を行いました。リービングケアとは、簡単に説明すると、中高生を中心とした社会的自立に向けた準備をするためのケア、アフターケアとは、社会的養護という制度から出た後、つまりは施設を退所した後に行うケアのことです。全国の児童養護施設(2014年12月現在では601ヶ所、全国児童養護施設協会HP参照)に入所している、施設からの退所を控えた高校生3年生(あるいは4年生)を対象としてアンケート調査を実施しました。彼らの進路、施設で受けたケアに対する評価、施設への適応感などを調査し、実態を把握すること、退所した後の調査への基礎データを得ることなどを目的に行いました。大学への進学率の全国平均との差、子どもの行動や情緒の特性などの結果から言えること、提言、今後の課題について報告書にまとめたものをPDF(下記のURLをクリックしてください)で載せさせて頂きました。研究成果として結果を社会に発信することが求められているだけでなく、多くの人が社会的養護の現状を知り、子ども、虐待の問題、子育てについて考える機会となってもらえればと思っています。
 静岡県内にも、12の児童養護施設があります(その他、東京都管轄の施設が2ヶ所)。本学のコミュニティ福祉学科では、多くの学生が保育士資格や社会福祉士受験資格取得に向けて広く福祉や保育(子ども)について学んでいます。児童福祉の分野に関心を持ち、児童養護施設を実習先とし、それぞれの専門分野から子ども虐待や、社会的養護の問題に取り組み、就職を希望する学生もいます。私は臨床心理学を専門としていますが、様々な専門職が協働して支援をすることが求められている領域であり、福祉、保育、心理の視点を活かした支援について今後も学生とともに考えていきたいと思っています。
文:玉井紀子(コミュニティ福祉学科)

厚生労働省平成26年度児童福祉問題研究事業報告書
http://www.shizuoka-eiwa.ac.jp/pdf/20150515tamaikennkyu.pdf

 

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